松潟堰…7
(『松潟堰…6』のつづき)
●踏み跡に感謝しつつも、土の露出した法面は湿気を帯びて、思ったより滑りやすく、足元の心許なさに背中をぞわぞわさせつつの前進。フェンスを手掛かりにできるのが、本当にありがたかったものです。
恐る恐る、それこそ一寸刻みに蟹の横這いを続け、ようやくフェンスの張り出しに到達。閘室は見えるか?‥‥「見えます! 見えます!」と、まるで二百三高地に到達した前進観測員のごとく、脳内で喜悦の叫びを上げたのであります。
改めてしっかりとフェンスにつかまり、コンクリート護岸の天端を踏みしめた足元を再確認してから、思い切って身を乗り出し、カメラを右手で差し出しました。

●径間2.1mの威容、間近にあり。
極小閘門に威容というのは、ちょっとおかしいかもしれません。しかし近くで眺めると、堰併設ならではの高さが凛として立つ印象を与え、またそれゆえの狭小径間が強調された外観に、「小粒でも、やはり閘門だなあ」と、思い入れが深まったからこそ、そう感じられたのでしょう。

●伸ばした右手をプルプルさせながら、ズームでたぐって閘室をアップ。ううん、何度も恐縮ですが、本当に狭い‥‥。これではフェンダーも付けられないでしょう。
上流側の信号も位置か高すぎて違和感がありましたが、下流側の信号はさらに斜め上を行き、橋の構造に半分隠れてしまっています。通航艇からの視認性は、ほとんど考えられていないようですね‥‥。
●セルフ操作の把手があるかと目を凝らしたものの、開放時はロープが上げてあるのか、それとも側壁に凹部でも設けて収めてあるのか、確認できませんでした。
イヤ、それよりよく見ると、左の側壁に埋め込みハシゴが複数列突き出ていて、結果的に径間をさらに縮めているじゃないですか! 実際の通航可能な幅員は、1.8mくらいになるのでしょうか。恐らく和船タイプと思いますが、どんな舟が通るのか、見てみたいものです。
【撮影地点のMapion地図】

●少々物足りない部分はあったものの、楽しく、かつ無事に閘門探訪を終えることができました。最後におまけのスナップを2枚。上は陽射しを浴びて、のどかな表情を見せる土砂吐ゲート。
右はこの項の1回目で触れた、昭和12年に竣工した先代松潟堰の遺構らしきもの。北岸の下流にあったこと、戸溝が残っていることから、まず間違いないかと思われます。
(元年11月4日撮影)
(この項おわり)

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恐る恐る、それこそ一寸刻みに蟹の横這いを続け、ようやくフェンスの張り出しに到達。閘室は見えるか?‥‥「見えます! 見えます!」と、まるで二百三高地に到達した前進観測員のごとく、脳内で喜悦の叫びを上げたのであります。
改めてしっかりとフェンスにつかまり、コンクリート護岸の天端を踏みしめた足元を再確認してから、思い切って身を乗り出し、カメラを右手で差し出しました。

●径間2.1mの威容、間近にあり。
極小閘門に威容というのは、ちょっとおかしいかもしれません。しかし近くで眺めると、堰併設ならではの高さが凛として立つ印象を与え、またそれゆえの狭小径間が強調された外観に、「小粒でも、やはり閘門だなあ」と、思い入れが深まったからこそ、そう感じられたのでしょう。

●伸ばした右手をプルプルさせながら、ズームでたぐって閘室をアップ。ううん、何度も恐縮ですが、本当に狭い‥‥。これではフェンダーも付けられないでしょう。
上流側の信号も位置か高すぎて違和感がありましたが、下流側の信号はさらに斜め上を行き、橋の構造に半分隠れてしまっています。通航艇からの視認性は、ほとんど考えられていないようですね‥‥。
●セルフ操作の把手があるかと目を凝らしたものの、開放時はロープが上げてあるのか、それとも側壁に凹部でも設けて収めてあるのか、確認できませんでした。
イヤ、それよりよく見ると、左の側壁に埋め込みハシゴが複数列突き出ていて、結果的に径間をさらに縮めているじゃないですか! 実際の通航可能な幅員は、1.8mくらいになるのでしょうか。恐らく和船タイプと思いますが、どんな舟が通るのか、見てみたいものです。
【撮影地点のMapion地図】


右はこの項の1回目で触れた、昭和12年に竣工した先代松潟堰の遺構らしきもの。北岸の下流にあったこと、戸溝が残っていることから、まず間違いないかと思われます。
(元年11月4日撮影)
(この項おわり)

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松潟堰…6
(『松潟堰…5』のつづき)
●これでは閘室は見られそうにないなあ、少しでもディテールを拾ってゆければおんの字か‥‥。と一人ごちながら、下流側に戻りつつ観察を続けることに。
ふと巻上機室の窓から、操作盤の一部が見えていることに気づき、ズームでたぐってみました。「舟通し上流・充水ゲート機側操作盤」と書かれたプレートがありますね。通航艇から把手を引いて運転するセルフ操作なのか、職員さんが出張ってきて動かす機側操作なのか‥‥。

●フェンス越しに、うらめしそうな顔をして眺めていたら、あっ、と気づかされたものが。あれ、セルフ操作用の把手が下がっているスイッチだ!
ウェブ上で公開されている、閘門の設備などについて記されたPDFを読んでいると、「プルスイッチ」とか「引き綱スイッチ」という呼称で出てくるので、そちらが正式名称のようですが、まさにそれです。松潟堰舟通し、セルフ操作であることを確認できました! 何分フェンスとさらに柵があったので、何枚撮っても柵にピントが合ってしまい、写真はご覧の惨状でしたが‥‥。
●右と下の写真は、監視カメラの目線(?)を気にしながらも、フェンスにカメラをぐりぐり突っ込んだり、一瞬だけフェンスに足をかけて伸びあがりと、ヒットエンドランのようにしてものした苦心の記録(でも何でもない)であります。
右はバイパスゲートのスピンドル巻上機。青い塗装が遠くからでもよく目立っていましたよね。ギヤボックスのケーシングに備えられたメーター、開度計の上には「seibu」の銘が浮き出されていました。
下は一瞬だけフェンスによじ登って撮った、前扉室のゲート周り。う~ん、閘室がほとんど見えない‥‥何とかならないものでしょうか。


●半ばあきらめながら、舟通しの下流側まで戻ってくると、フェンスの終端が目に入りました。近づけまいという意思を象徴するように、水面上まで張り出したこの厳しいビジュアル。ここで、いや、これはチャンスではないのか? と改めて思いなおしたのです。
よく見ると、釣り人さんがつくったと思しき踏み跡があって、護岸上まで容易に出られそう。それに、フェンスを手がかりとしてつかまってゆけば、落水の危険性は上流側よりはるかに少ないはず! よし、最後の賭けだと、ガードレールをすり抜けて踏み出してみることに。
(元年11月4日撮影)
(『松潟堰…7』につづく)

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ふと巻上機室の窓から、操作盤の一部が見えていることに気づき、ズームでたぐってみました。「舟通し上流・充水ゲート機側操作盤」と書かれたプレートがありますね。通航艇から把手を引いて運転するセルフ操作なのか、職員さんが出張ってきて動かす機側操作なのか‥‥。

●フェンス越しに、うらめしそうな顔をして眺めていたら、あっ、と気づかされたものが。あれ、セルフ操作用の把手が下がっているスイッチだ!
ウェブ上で公開されている、閘門の設備などについて記されたPDFを読んでいると、「プルスイッチ」とか「引き綱スイッチ」という呼称で出てくるので、そちらが正式名称のようですが、まさにそれです。松潟堰舟通し、セルフ操作であることを確認できました! 何分フェンスとさらに柵があったので、何枚撮っても柵にピントが合ってしまい、写真はご覧の惨状でしたが‥‥。

右はバイパスゲートのスピンドル巻上機。青い塗装が遠くからでもよく目立っていましたよね。ギヤボックスのケーシングに備えられたメーター、開度計の上には「seibu」の銘が浮き出されていました。
下は一瞬だけフェンスによじ登って撮った、前扉室のゲート周り。う~ん、閘室がほとんど見えない‥‥何とかならないものでしょうか。


●半ばあきらめながら、舟通しの下流側まで戻ってくると、フェンスの終端が目に入りました。近づけまいという意思を象徴するように、水面上まで張り出したこの厳しいビジュアル。ここで、いや、これはチャンスではないのか? と改めて思いなおしたのです。
よく見ると、釣り人さんがつくったと思しき踏み跡があって、護岸上まで容易に出られそう。それに、フェンスを手がかりとしてつかまってゆけば、落水の危険性は上流側よりはるかに少ないはず! よし、最後の賭けだと、ガードレールをすり抜けて踏み出してみることに。
(元年11月4日撮影)
(『松潟堰…7』につづく)

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松潟堰…5
(『松潟堰…4』のつづき)
●喜び勇んで近づき、フェンスの網目にカメラを突っ込んで、各堰柱に掲げられた銘板を記録。右は後扉室、下は前扉室のもので、併掲されたバイパスゲートのそれは略同のため、前扉室のものを省略しました。
径間2.1m!
うひょひょひょ、この狭さったら! 文句なしの極小閘門であることが確認できて、来てよかったとしみじみ。閘室の扉体は天地寸法が3.56m、前扉室の扉体は1,76mと、やはり倍近い差がありますね。
揚程に最大と常時の違いが記されているのは、堰を開放し休止フックまで上げたときと、稼働時の違いとみてよいと思われます。
●しかしバイパスゲート、呑口径わずか40cm、扉体の重さ70kgと、ゲートというよりもうバルブに近く、律儀に銘板を掲げているのが微笑ましくなるほどですね。こんなに小さな閘門にもかかわらず、扉体を細めに開けた注水法をとらずに、わざわざバイパス設備をしているあたり、小粒でも充実した装備の閘門といえるでしょう。


●北岸、土砂吐ゲートの周りはフェンスもなく、水際に釣り人さんの姿も見えるほどだったのに、こちらは見てのとおり対照的な警戒ぶり。
右の写真のように、ライトが二つもついた監視カメラがこちらを睨んでいるとあっては、フェンスに足をかけて写真を撮るのもはばかられます。閘室の中を見てみたいのですが、どこかいい場所はあるかなと、ウロウロしていると‥‥。

●上流側にフェンスの途切れたところがあったので、恐る恐る足を踏み出してみました。法面は思ったより傾斜がきつく、背の高い草がみっちり茂っていて、手がかりもなく歩を進めるのは難しそう。
その先は高さのある垂直護岸ですから、足を滑らせたときのことを考えると、どうもぞっとしません。フェンス際を進んでもすぐ監視カメラの視界に入るしで、涙を呑んであきらめることにしました‥‥。
(元年11月4日撮影)
(『松潟堰…6』につづく)

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径間2.1m!
うひょひょひょ、この狭さったら! 文句なしの極小閘門であることが確認できて、来てよかったとしみじみ。閘室の扉体は天地寸法が3.56m、前扉室の扉体は1,76mと、やはり倍近い差がありますね。
揚程に最大と常時の違いが記されているのは、堰を開放し休止フックまで上げたときと、稼働時の違いとみてよいと思われます。
●しかしバイパスゲート、呑口径わずか40cm、扉体の重さ70kgと、ゲートというよりもうバルブに近く、律儀に銘板を掲げているのが微笑ましくなるほどですね。こんなに小さな閘門にもかかわらず、扉体を細めに開けた注水法をとらずに、わざわざバイパス設備をしているあたり、小粒でも充実した装備の閘門といえるでしょう。



右の写真のように、ライトが二つもついた監視カメラがこちらを睨んでいるとあっては、フェンスに足をかけて写真を撮るのもはばかられます。閘室の中を見てみたいのですが、どこかいい場所はあるかなと、ウロウロしていると‥‥。

●上流側にフェンスの途切れたところがあったので、恐る恐る足を踏み出してみました。法面は思ったより傾斜がきつく、背の高い草がみっちり茂っていて、手がかりもなく歩を進めるのは難しそう。
その先は高さのある垂直護岸ですから、足を滑らせたときのことを考えると、どうもぞっとしません。フェンス際を進んでもすぐ監視カメラの視界に入るしで、涙を呑んであきらめることにしました‥‥。
(元年11月4日撮影)
(『松潟堰…6』につづく)

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松潟堰…4

●舟通しを狙う視点にも手詰まり感があったので、北岸を離れて南岸に向かうことにしました。いったん国道128号線に出て、大迂回する形で一宮橋を渡り、途中から未舗装になった川沿いの道をたどって堰を目指します。途中でクルマを降りて歩き、堰柱が見えたあたりで、意外や、まだ新しい橋が出現。
堰の下流で合流する、ささやかな派川を渡る橋でした。親柱もなく、高覧にも銘板のたぐいは取り付けられていなかったので、無銘橋かと思ったら、桁の側面という妙な場所に銘板を発見。「どんどん橋」、平成9年竣工だそうです。

表面に刻まれた字を読んでみると、「高石真五郎別荘跡」‥‥う~ん、誰だろう? 天端に説明板があったのでこれも読んでみると、毎日新聞社最高顧問、前の東京オリンピックでIOC委員だった方だそう。知りませんでした(あ、誤植見つけちゃった‥‥)。
説明文はさらに、高石さんの別荘のみならず、ご当地一宮が昭和初期まで別荘地として、多くの名士に愛されていたことも語っていました。勉強になります。

●とはいえ、流路ギリギリの地所に別荘が建っていたとは考えづらいので、河道改修が行われる以前は、川との距離も相応にあったのだと思われます。海にも近く、温暖でものなりもよさそうなご当地は、保養にもってこいの土地柄と見られたのでしょうね。


閘室の上下流に長々と伸び、管理橋の橋詰も金網の向こうで、ろくな視点が得られそうにありません。とにかく近づけまいとする、かたくなな意志がビリビリ伝わってきました。少々凹みながらも、堰柱の側面に銘板発見! 気をとりなおし、見られるものは全部見てやろう!
【撮影地点のMapion地図】
(元年11月4日撮影)
(『松潟堰…5』につづく)

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松潟堰…3
(『松潟堰…2』のつづき)
●近くからゲートのディテールを眺めよう、と正横まで来たら、こんな看板が立っていたので、立ち止まって読み下してみまると‥‥おお。
「天然ガス輸送管」の文字に目線が吸い寄せられました。今立っている長生村のお隣、茂原市は天然ガスの生産量では国内随一を誇る土地柄。堰の管理橋にガス管が渡っているのも、むべなるかなであります。
●管理橋の下流側にも、略同の看板がもう一つありました。こちらは企業名が違っていて、「天然ガス送水管・送ガス管敷設」とありますね。
ガス井から一緒に出てくる湧水を運ぶ管路も、併設されているということでしょうか。一つの橋に、複数のガス管が渡っているご当地ならではのインフラ風景、よいものです。ご興味のある向きは、先の看板にもあった地元企業、関東天然瓦斯開発株式会社の「天然ガスの歴史」をぜひ!

●ガス管も渡して、地域に貢献している肝心の管理橋は、先にも触れたようにご覧のとおり通行禁止。真ん中あたりから向こうは、幅がぐっと狭まっていますが、高欄は十分な高さがあり、照明も設けられていて、人道橋として供してもまったく問題なさそうです。
何分橋の少ないところですから、ここが渡れれば助かる方も少なくないと思うのですが‥‥。過去に事故でもあったのでしょうか。

●さらに下流へ向かって歩き、距離が取れたところで振り返って、舟通しを一枚。う~ん、この角度からは、特に得るものはなさそうだなあ。橋桁の側面に這わせてある管路が、例のガス管かな?
右側、前扉室の方が微妙に低く見えるけれど、実際そうなのか、単に屋根の傾斜でそう錯覚しているだけなのか、ちょっと判断がつきかねました。

●堰の全景を眺められるところまで離れて、枯れた法面とともに一枚。
この日はたくさんの白雲が青空に流れて、本当にきれいでした。千葉県を訪ねたときは、比較的好天に恵まれるせいか、自分の中では千葉というと、空の美しさが連想されるほど。大好きです、千葉の空。
【撮影地点のMapion地図】
(元年11月4日撮影)
(『松潟堰…4』につづく)

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「天然ガス輸送管」の文字に目線が吸い寄せられました。今立っている長生村のお隣、茂原市は天然ガスの生産量では国内随一を誇る土地柄。堰の管理橋にガス管が渡っているのも、むべなるかなであります。

ガス井から一緒に出てくる湧水を運ぶ管路も、併設されているということでしょうか。一つの橋に、複数のガス管が渡っているご当地ならではのインフラ風景、よいものです。ご興味のある向きは、先の看板にもあった地元企業、関東天然瓦斯開発株式会社の「天然ガスの歴史」をぜひ!

●ガス管も渡して、地域に貢献している肝心の管理橋は、先にも触れたようにご覧のとおり通行禁止。真ん中あたりから向こうは、幅がぐっと狭まっていますが、高欄は十分な高さがあり、照明も設けられていて、人道橋として供してもまったく問題なさそうです。
何分橋の少ないところですから、ここが渡れれば助かる方も少なくないと思うのですが‥‥。過去に事故でもあったのでしょうか。

●さらに下流へ向かって歩き、距離が取れたところで振り返って、舟通しを一枚。う~ん、この角度からは、特に得るものはなさそうだなあ。橋桁の側面に這わせてある管路が、例のガス管かな?
右側、前扉室の方が微妙に低く見えるけれど、実際そうなのか、単に屋根の傾斜でそう錯覚しているだけなのか、ちょっと判断がつきかねました。

●堰の全景を眺められるところまで離れて、枯れた法面とともに一枚。
この日はたくさんの白雲が青空に流れて、本当にきれいでした。千葉県を訪ねたときは、比較的好天に恵まれるせいか、自分の中では千葉というと、空の美しさが連想されるほど。大好きです、千葉の空。
【撮影地点のMapion地図】
(元年11月4日撮影)
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