コミック上で川蒸気が大活躍! 「ゴールデンカムイ」24巻
●昨年4月のことです。ツイッターのこちらのスレッドで、y2_naranja氏にコミック「ゴールデンカムイ」(野田サトル・集英社)で、石狩川にかつて就航していた川蒸気船・上川丸が登場しているシーンのあることを教えていただきました(ありがとうございました!)。
「ゴールデンカムイ」を読んだことはありませんでしたが、明治時代の北方文化や民俗の描写が精緻かつ、ストーリーも巧みなことで高く評価されている方も少なくないこと、ウェブ上でもたびたび話題になっていることは知っていました。
●コミックに川蒸気が登場するのは、恐らく初めてのこととあって、川蒸気ファンとしていてもたってもいられなくなったことは、いうまでもありません。まず検索してみると、「ゴールデンカムイ上川丸と江別港を見に聖地巡礼!チョウザメが沢山いる?北海道江別市!」(江別・野幌情報ナビ えべナビ)に、当該234話の数コマが掲載されているのを発見。
まあ、感動しましたよ。素晴らしい! この数コマを拝見しただけでも、恐らく当地を訪ねてきちんと取材され、川蒸気を理解したうえで描かれていることが感じられました。レプリカの存在も、正確な描写に大いに力があったのはいうまでもありますまい。
即断で既刊のコミック全巻を購入、「ゴールデンカムイ」の世界に肩まで浸かりながら、234話の収録されたコミック、24巻の発売を心待ちにしたのであります。

●さて、12月も後半となり、待ちに待った24巻を発売と同時に横っ飛びに入手。さっそく拝読してみると‥‥。
アイヌの宝の手掛かりを探して旅をしてきた杉元、アシリパ、白石の3人は、白石の提案でぬかるんだ陸路を避け、川蒸気・上川丸に乗って江別まで下ることに。
ここで、樺戸監獄への交通確保のため航路が設けられたこと、囚人が石狩川の航路整備に駆り出されたことを、白石が解説してくれるのは「もと囚人だから、そのくらい知っててもおかしくないな」と思えるのですが、次のセリフ、
●「外輪式蒸気船は両側の水車で水面を掻いて進むから スクリュー船と違って浅い川とかで走るのにいいのよ」
脱獄王のくせに何でそんなにフネに詳しいんだ白石。
艀を曳いて石狩川を下る上川丸のゆく手に、2隻の小型和船が。船長は船の乗っ取りをたくらむ賊と判断、舵さばきで一艘を蹴散らしたのはいいものの、残ったもう一艘から杉元らの探していた刺青のあるもと囚人、海賊房太郎が乗り込んできて船を乗っ取られ、海賊一味と船員、拳銃を持った老郵便配達夫もまじえての大乱闘に。
●この下りの見せ場は、兵士を乗せた行逢船「神山丸」(フィクション)とのチェイスシーン。発砲音に気づいた兵士が、神山丸を後進させて上川丸を追跡し始めます。
それに気づいた賊・海賊房太郎、船長を押しのけ上川丸の舵輪を自ら握って、初めてとは思えない見事な舵さばきで、神山丸の外輪に捨て身の体当たり! 行動不能に追い込んで逃走に成功します。
●あまりストーリーを垂れ流すと差しさわりがあるので、ここまでに留めておきますが、急転舵で突入する上川丸の航跡、外輪から上がった水しぶきが2条、白く描かれているあたり、まことに見事としかいいようがありません。
ストーリーの流れの上での舞台の一つに過ぎないとはいえ、船のディテールや船内の様子、外輪の動きなどなど、ファンの目から見ても満足のいく描写で、きしみ、のたうつ船体の悲鳴や、外輪の打つ水音が聞こえてくるようです。このシーンのもう一つの主役は川蒸気、といっていい過ぎでないと思えるくらい。野田サトル先生の観察眼と想像力、筆力に、改めて感服した次第です。
●そして何より、川蒸気が恐らく初登場したコミックで、これだけの活躍の場を与えられたことを、大いに喜びたいと思います。舞台となったことで、上川丸だけでなく、川蒸気そのものへの関心も高まることも期待したいもの。ご興味のある向き、ぜひご一読を勧めします。
●なお実物の上川丸については、弊ブログの過去記事「上川丸の絵葉書が!」もご参照ください。
ちなみに石狩川の汽船航路の経営はきわめて苦しく、船社は4回もの変遷を経たのち、日露戦争直前の明治35(1902)年からは、国からの補助金により民間の受命者が運航を委託される、「命令航路石狩川線」となりました。舞台となった明治末の石狩川航路は、いわばほぼ国によって維持されていた時期にあたります。

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「ゴールデンカムイ」を読んだことはありませんでしたが、明治時代の北方文化や民俗の描写が精緻かつ、ストーリーも巧みなことで高く評価されている方も少なくないこと、ウェブ上でもたびたび話題になっていることは知っていました。
●コミックに川蒸気が登場するのは、恐らく初めてのこととあって、川蒸気ファンとしていてもたってもいられなくなったことは、いうまでもありません。まず検索してみると、「ゴールデンカムイ上川丸と江別港を見に聖地巡礼!チョウザメが沢山いる?北海道江別市!」(江別・野幌情報ナビ えべナビ)に、当該234話の数コマが掲載されているのを発見。
まあ、感動しましたよ。素晴らしい! この数コマを拝見しただけでも、恐らく当地を訪ねてきちんと取材され、川蒸気を理解したうえで描かれていることが感じられました。レプリカの存在も、正確な描写に大いに力があったのはいうまでもありますまい。
即断で既刊のコミック全巻を購入、「ゴールデンカムイ」の世界に肩まで浸かりながら、234話の収録されたコミック、24巻の発売を心待ちにしたのであります。

●さて、12月も後半となり、待ちに待った24巻を発売と同時に横っ飛びに入手。さっそく拝読してみると‥‥。
アイヌの宝の手掛かりを探して旅をしてきた杉元、アシリパ、白石の3人は、白石の提案でぬかるんだ陸路を避け、川蒸気・上川丸に乗って江別まで下ることに。
ここで、樺戸監獄への交通確保のため航路が設けられたこと、囚人が石狩川の航路整備に駆り出されたことを、白石が解説してくれるのは「もと囚人だから、そのくらい知っててもおかしくないな」と思えるのですが、次のセリフ、
●「外輪式蒸気船は両側の水車で水面を掻いて進むから スクリュー船と違って浅い川とかで走るのにいいのよ」
脱獄王のくせに何でそんなにフネに詳しいんだ白石。
艀を曳いて石狩川を下る上川丸のゆく手に、2隻の小型和船が。船長は船の乗っ取りをたくらむ賊と判断、舵さばきで一艘を蹴散らしたのはいいものの、残ったもう一艘から杉元らの探していた刺青のあるもと囚人、海賊房太郎が乗り込んできて船を乗っ取られ、海賊一味と船員、拳銃を持った老郵便配達夫もまじえての大乱闘に。

それに気づいた賊・海賊房太郎、船長を押しのけ上川丸の舵輪を自ら握って、初めてとは思えない見事な舵さばきで、神山丸の外輪に捨て身の体当たり! 行動不能に追い込んで逃走に成功します。
●あまりストーリーを垂れ流すと差しさわりがあるので、ここまでに留めておきますが、急転舵で突入する上川丸の航跡、外輪から上がった水しぶきが2条、白く描かれているあたり、まことに見事としかいいようがありません。
ストーリーの流れの上での舞台の一つに過ぎないとはいえ、船のディテールや船内の様子、外輪の動きなどなど、ファンの目から見ても満足のいく描写で、きしみ、のたうつ船体の悲鳴や、外輪の打つ水音が聞こえてくるようです。このシーンのもう一つの主役は川蒸気、といっていい過ぎでないと思えるくらい。野田サトル先生の観察眼と想像力、筆力に、改めて感服した次第です。
●そして何より、川蒸気が恐らく初登場したコミックで、これだけの活躍の場を与えられたことを、大いに喜びたいと思います。舞台となったことで、上川丸だけでなく、川蒸気そのものへの関心も高まることも期待したいもの。ご興味のある向き、ぜひご一読を勧めします。
●なお実物の上川丸については、弊ブログの過去記事「上川丸の絵葉書が!」もご参照ください。
ちなみに石狩川の汽船航路の経営はきわめて苦しく、船社は4回もの変遷を経たのち、日露戦争直前の明治35(1902)年からは、国からの補助金により民間の受命者が運航を委託される、「命令航路石狩川線」となりました。舞台となった明治末の石狩川航路は、いわばほぼ国によって維持されていた時期にあたります。

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